はじめに:はじめての赤ちゃん、どう接したらいい?
はじめて赤ちゃんを迎えたとき、多くの親が感じるのが「どうやって声をかけたらいいんだろう」という戸惑いです。ましてや、「人と目を合わせて話すのが苦手…」というパパやママにとっては、赤ちゃんとの関係づくりにちょっと不安を感じるかもしれません。
でも、大丈夫。赤ちゃんは、大人のような会話ができなくても、生まれながらにして“社会的なサイン”をキャッチする力を持っています。今回ご紹介するのは、そんな赤ちゃんの「社会的スキル」の芽生えについて教えてくれる興味深い研究です。
研究紹介:「目を見て話すこと」が赤ちゃんの記憶に影響しそう
ご紹介するのは、Guellai & Streri(2011)の研究論文『Cues for Early Social Skills』。この研究では、生まれて間もない*新生児(平均年齢43時間!)*が「誰が話しかけてくれたか」を覚えているかどうかを調べました。
研究の大きなポイントは:
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大人が赤ちゃんを見ながら話す(アイコンタクトあり)
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大人が赤ちゃんを見ずに話す(アイコンタクトなし)
この2パターンを比べたとき、赤ちゃんがどちらの大人の顔をよりよく覚えていたか?という実験です。
実験の方法:
赤ちゃんに、動画で話しかける女性の顔を見せます。
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片方の女性は赤ちゃんの目を見ながら話す(アイコンタクトあり)
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もう片方は赤ちゃんから目を逸らして話す(アイコンタクトなし)
その後、2人の女性が無言で映る静止画を見せ、赤ちゃんがどちらを長く見つめるかを調べました。
結果:赤ちゃんは「目を合わせてくれた人」を覚えていた!
結果はとてもはっきりしていました。
🔍 新生児たちは、「目を合わせて話しかけてくれた人」の顔を、後になってもよく覚えていたのです!
一方、目を合わせなかった人については、記憶していないようでした。
この研究からわかるのは、赤ちゃんはすでに 「これは私に話しかけてる」「この人とつながってる」 という感覚を持っているということ。つまり、アイコンタクトは、赤ちゃんにとって「あなたを見てるよ」「あなたとつながっているよ」という大切なサインなのです。
この研究の大切なポイント
この研究は、赤ちゃんが単なる反射で動いているのではなく、「社会的な存在」として世界に生まれてきていることを示しています。
とくに初めて子育てをする方にとっては、「赤ちゃんってまだ何もわからないでしょ?」と思いがちですが、それは大きな誤解。赤ちゃんはちゃんと“人の顔”を見て、“誰がどんなふうに話しかけてくれたか”を覚えているのです。
人と目を合わせるのが苦手なママ・パパへ
この研究が示しているのは、長い時間じっと赤ちゃんの目を見続ける必要はないということです。
ほんの数秒でも、赤ちゃんの顔を見ながら話しかけることができれば、それだけで十分な“対話”になります。むしろ、見つめすぎるよりも、「見て→話して→ちょっと目をそらして→また見る」くらいの自然なリズムが心地よいと感じる赤ちゃんもいます。
あなたの「そのまま」で大丈夫。がんばって“演じる”必要はありません。
赤ちゃんとの絆を育むための3つのヒント
(この研究から学べること)
① 「おはよう」「おなかすいたね」など、日常の声かけを“顔を見て”言ってみよう
話す内容はシンプルでOK。「今○○してるよ」と実況中継するだけでも赤ちゃんは安心します。顔を見て話すことで、赤ちゃんは“自分に向けられた言葉”だとわかります。
② 抱っこ中にそっと目を合わせて、にっこり
抱っこをしているとき、赤ちゃんと目の高さが自然と合います。そのとき、声を出さなくても、やさしく目を見て笑いかけるだけで十分。それが赤ちゃんにとっての「愛されてるサイン」になります。
③ “話しかけやすい”環境づくりをしてみよう
話しかけるのに照れがある方は、**赤ちゃんと同じ高さで過ごせる抱っこ紐(リングスリングなど)**を使ってみましょう。赤ちゃんの顔がよく見え、声も届きやすくなります。外出先でも自然と話しかけるきっかけが増えるはずです。
おわりに:赤ちゃんはあなたを見ている、あなたを覚えている
はじめての育児は、わからないことだらけ。でも、今回の研究が教えてくれるように、赤ちゃんはすでに社会的な存在であり、あなたとの関わりをしっかり感じ取っています。
「目を見て話す」ことが苦手なあなたも、焦らなくて大丈夫。赤ちゃんは、あなたが自分に向けてくれる小さなサインをちゃんとキャッチしています。
その一歩が、赤ちゃんとの絆を深めていくスタートです。
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このブログで使った研究
Guellai, B., & Streri, A. (2011)
Cues for Early Social Skills: Direct Gaze Modulates Newborns’ Recognition of Talking Faces
PLoS ONE, 6(4): e18610. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0018610