赤ちゃんがぐずぐずとずっと泣いてお困りの親御さんは多いと思います。なぜ泣くのか? どうして泣き止まないのか? 泣く理由はたくさんありますが,泣き止ませる方法もいくつもあります。赤ちゃんが落ち着く状態をつくる方法は科学的にも明らかになっています。

おっぱいも飲んでゲップもした、おむつも快適、室温も適性。もう撃つ手がないよーとお嘆きの皆さま。お疲れ様です。よくある方法としてはビニール袋をこすってカシャカシャと音をたてるというもので,この音が胎内にいたときの音に似ていると言われています。その他気分を変えるために外出して外の空気を吸わせてみる,泣いて暑くなった顔や体を冷ますために風を送ってみる,泣き止むという噂の音楽を聴かせてみる(タケモトピアノのCM曲などが有名です),おなかや腿,背中をマッサージしてみるなどがあります。

この記事では,科学的に証明されている赤ちゃんがリラックスする方法を紹介し,おうちの中での実践方法をお伝えします。先に泣き止ませる方法からご紹介しますね。

念のため。母乳の場合はあげすぎにはならないので、ぐずった時にはすぐに含ませて大丈夫です。気になったらIBCLCの戸田先生のブログで確認されるのはいかがでしょうか?
戸田先生のブログ→やわらかな風の吹く場所に:母乳育児を応援

1 密着して・抱っこして・早歩き

ほ乳類の赤ちゃんには輸送反応がそなわっています。これは母親が赤ちゃんを守り,赤ちゃんは泣き止んだり落ち着いて親の子育てに協力するというお互いがハッピーになる仕組みです。ヒトでは生後6ヶ月くらいまではこの反応が残っている(進化の過程で保存されている)と考えられています(Esposito et al.,2013)。輸送反応には条件があります。

  • 少しキュッと密着して抱っこすること
  • 1分間に90回のリズムで歩くこと(”アルプス一万尺”くらいのリズムです)

歩き回る気力がなければ,上下にリズムをとるだけでもよいです。また,おくびがすわっていない時期は頭部をしっかり支えてフォローしてください。

2 ギュッと抱っこする

これは生後4ヶ月以上のお子さんの方法です。ギュッと抱っこしてリラックスする作用には,ある程度親子の関係性ができているということが必要のようです。そのため,初対面の大人が赤ちゃんをギュッと抱っこしても効果はなさそうです。

  • 強く抱きしめすぎない
  • 「かわいい〜」と思いながらぎゅっと抱っこする
  • ママでもパパでもリラックスするが,初対面の人とは効果がない

軽く抱っこしても効果はないようなので,赤ちゃんのおなかと大人の胸が密着するくらいのキュッとした抱っこがよいようです。
これには他のメリットもあって,親の方(抱っこする側)もリラックスする効果が認められています。

3 赤ちゃんの姿勢を改善する

赤ちゃんの自然な姿勢は背中が緩くカーブしている状態です。歩けるようになると背中のカーブもS字になっていきますが,腰がすわるまでは緩くカーブしているとイメージして下さい。この姿勢では脚が開脚します。布団に寝かせると泣いてしまう赤ちゃんは,急に背中が伸びる(カーブが崩れる)というのも一つの要因ではないかと考えられています。キュッと密着抱っこして歩いて落ち着いてきたらカーブしたところにおろすのもひとつの手段として提案します。

授乳クッションの上にバスタオルを敷く

赤ちゃんが泣き止む抱っこひも

赤ちゃんを泣き止ませるためには,赤ちゃんがリラックスすることがよいようです。ビニール袋をシャカシャカしたりタケモトピアノでも効果がなければ,ギュッとできる抱っこひもを使ってはいかがでしょうか。
脚が伸びると→腰が引けて→お尻のカーブが崩れます。伸縮するストレッチ素材の抱っこひもで姿勢が保てるのは6kgくらいまでです。伸びない布製の抱っこひもは最初の使い方は少し練習が必要ですが,ちゃんとM字開脚になって寄り添える抱っこひもです。

北極しろくま堂では,2000年から布製抱っこひもを販売しています。今の製品のほとんどすべては日本国内でつくられ,品質管理されています。新生児から赤ちゃんが快適な姿勢をとれるものばかりですが,使い方が難しいと感じる方もいらっしゃるようです。

抱っこされて寝る赤ちゃん

新生児から使えるへこおび、おんぶもできます。

使い方がわからない,合っているか不安な時はyoutubeの動画で確認したり,LINE(@babywearing)でご相談ください。「この使い方であっていますか?」というようなご質問でも大歓迎です。

まとめ

赤ちゃんが長い時間泣いていると心配にもなるし,親もあやしたり慰めたりで心身共に疲れますよね。わかります。赤ちゃんは「あの仕事するのやだな」とか「宿題やってない,どうしよう」というような社会的な悩みはありません。快適かそうじゃないかというだけです。室温や衣服,おむつ,おなかの具合がちょうどよいなら,あとは姿勢と動きです。ぜひギュッと抱っこと「アルプス一万尺」リズムをやってみてくださいね。

なお,冒頭で示したビニール袋のカシャカシャ音や外の空気を吸う,風,タケモトピアノのCM曲,マッサージの中で科学的に根拠がありそうなのはマッサージです。触れることによってオキシトシンが分泌されるため,リラックスする効果が認められています。10分くらいで分泌がピークになるので,10分くらい優しく撫でるというのがよいかもしれません。オキシトシンについて詳しくはこちらの山口創先生の記事をご覧ください。

参考
G. Esposito, S. Yoshida, R. Ohnishi, Y. Tsuneoka, M. del C. Rostagno, S. Yokota, S. Okabe, K. Kamiya, M. Hoshino, M. Shimizu, P. Venuti, T. Kikusui, T. Kato, and K. O. Kuroda, Infant Calming Responses during Maternal Carrying in Humans and Mice, Curr. Biol. 23, 739 (2013).
S. Yoshida, Y. Kawahara, T. Sasatani, K. Kiyono, Y. Kobayashi, and H. Funato, Infants Show Physiological Responses Specific to Parental Hugs, iScience 23, 100996 (2020).