歯医者さんで抱っこ教室 in Shizuoka レポートします!
北極しろくま堂では、2018年4月から静岡市駿河区の麻生キッズデンタルパークで抱っこ教室を行なっています。
まず、麻生キッズデンタルパークのご紹介から。こちらのクリニックはお子様専門の歯医者さんで、虫歯にならないための予防に力を入れていらっしゃいます。
歯医者さんといえば暗くて無機質で怖いところ、というイメージがありますが、麻生キッズデンタルパークはまるでテーマパークのような内観です。壁には色とりどりの絵が描かれ、遊具もたくさん。通うのが楽しくなるような歯医者さんです。
抱っこ教室は毎月1回第1火曜日の午前中に開催しています。麻生キッズデンタルパークの患者さんでなくとも、どなたでもご参加いただけます。11月6日の回にはお母さん7名、お子様7名がお越しくださいました。
みなさんに参加動機を聞いてみました。
・助産師さんにへこおびがいいよと聞いて、興味がわいて参加しました。(4ヶ月半の子のお母さん)
・4人目の子どもを育児中。これまで使っていた抱っこひもが壊れたのでスリングに買い換えましたが、サイズの調整がうまくいかなかったので参加しました。正しい使い方を知りたいです。(1歳2ヶ月の子のお母さん)
・今使っているリュック式抱っこひもだと肩が凝ってしまい、特におんぶがつらいです。体が楽な抱っこやおんぶがしたいなと思い参加しました。(10ヶ月半の子のお母さん)
・リュック式の抱っこひもだと持ち運びが大変なので、へこおびに興味を持ちました。(生後10日の子のお母さん)
・北極しろくま堂ではないスリングを持っていますが、こちらのメーカーのものも気になって参加しました。(4ヶ月の子のお母さん)
・首がすわったらおんぶがしたいと思っているので、話を聞いてみたいと思って参加しました。(2ヶ月の子のお母さん)
・リュック式の抱っこひもに入れるとよく吐き戻すのが心配です。スリングを最近買ったので使いこなしたくて参加しました。(5ヶ月の子のお母さん)
自己紹介が終わったら、快適な抱っこやおんぶの方法やいいところを紙芝居を使ってお話します。ただ道具の使い方がわかるだけではなく、なぜ抱っこやおんぶが上手にできるといいのか、どうしたらもっと快適な抱っこやおんぶができるのかを知識として学んでいただきます。「なぜ」がわかると抱っこやおんぶに対する興味関心が深まりますし、使い方の理解も早いからです。
お話の後はいよいよ実践。北極しろくま堂の製品を実際にお試しいただきます。初めてスリングやへこおびを試着された方からは「軽い!」「すごい密着!」「高い!」という声が聞かれました。また、使い方に自信が持てずにいた方も「これで使えそうです!」とよろこんでいらっしゃいました。
「助産院や産婦人科、小児科ではなく歯科医院で抱っこ教室?」と不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし今、小児歯科の先生方が抱っこやおんぶの方法に注目をされているようです。
そこで麻生キッズデンタルパークの歯科医師の佐藤絢先生と歯科助手の徳田佳央理さんに、歯科クリニックでの抱っこ講座や抱っことお口の中の健康の関係性についてお話を伺いました。
Q. 北極しろくま堂に抱っこ講座を依頼してくださった経緯を教えていただけますか?
佐藤先生
麻生キッズデンタルパークが開院して来年で10年になります。5年ほど前からでしょうか、お子様の様子を見ていて「あれ?」と思うことが増えてきました。例えば口が開きっぱなしのお子様が多いんです。どうして口が開きっぱなしになったのかについて考えてみたとき、ある歯科の団体が赤ちゃんのころの抱っこのされ方に何か原因があるのでは、と勉強会で発表しているのを聞きました。確かに、街中で抱っこされている赤ちゃんを観察してみると、上を向いて口を開けている子が多いんですよ。あんなふうに抱っこされていることが、4歳5歳になった時に口が閉じられない一因なのではと感じました。
口を閉じるというのもクセ・習慣のひとつです。できるだけ早い段階で、子どもに正しいクセを身につけさせてあげる必要があると感じています。大人になってから悪いクセを直すのは大変だからです。以前は3歳までに正しいクセを身につけさせましょう、と言われていたのが、最近では2歳、1歳と年齢が下がってきています。ではどうやって1歳までにその正しいクセをつけさせるかといえば、養育者が正しい抱っこの仕方、飲ませ方、食べさせ方、寝かせ方などの知識をつけて、赤ちゃんに対して実践していくことが大切だと考えました。歯科医師の多くが虫歯を治す、欠損部位を治すという治療に専念している中で、赤ちゃんが健康発育をするための予防医療はまだマイナーな分野ではあります。でも必ず患者さんのためにはなりますので、まずはこちらから知識を提供してみようという話が持ち上がりました。それを実践するかどうかは本人次第。そしてクリニックとして何ができるかを考えた時、まずは抱っこからやってみようと思ったんです。そういった話を私が徳田さんにしたところ、北極しろくま堂さんがある歯科の勉強会で紹介されていたことを彼女が覚えていたんです。ダメ元で抱っこ講座のオファーをしてみたら快諾いただいたという流れです。
Q. 抱っこ講座に対するご来院の方の反応はいかがでしょうか?
徳田さん
2018年の4月から始めて約半年が経ちました。毎回ご好評いただいていて、今では定員以上のお申し込みをいただいている状況です。講座でスリングやへこおびをした時のお母さんたちの「軽い!」「気持ちいい!」という反応と笑顔を見ているとこちらもうれしくなります。一度受けていただいた方は抱っこに対する意識に変化がみられるような印象を受けるのですが、まずは「講座を受けてみよう」という気持ちになってもらうまでのハードルは相変わらず高いですね。アンテナの高い方は抱っこの仕方の重要性に気づいてくれて、「参加したい」とおっしゃってくれるのですが、日々の家事や育児で精一杯という方にとっては抱っこのことを考える余裕がないようでそこまでは至らないのです。そういった方にも手を差しのべられたらいいなと思っています。
佐藤先生
1回2回だけでなく、繰り返し行うことで正しく抱っこすることの大切さを印象づけることができるとも思っています。麻生キッズデンタルパークの821(ハニー)クラブ(※1)も1年を通して何度も同じことをやって、初めて虫歯にならない大切さや、歯のお掃除の手順の大切さを理解してもらえるので、抱っこも同じように繰り返し聞く場があるといいと思います。当クリニックの話とは離れますが、妊婦さんの母親学級や市の検診のようなところでも抱っこの仕方を教える時間があるといいですよね。結局教わってこないから不自然な抱き方をしてしまうのですから。
※1 821(ハニー)クラブ:0〜2歳のお子様向けの手遊びや音楽に合わせた歯みがき教室。子どもの行動を熟知した幼稚園教論資格者が担当し、最後に歯科衛生士が専門的なクリーニングをします。
Q. 来院されるお子様の姿勢や行動でなにか気がつくことはありますか?
佐藤先生
体のゆがみと前傾姿勢が気になるなと感じます。首を前に出さないと息ができないんですね。寝てる状態をそのまま縦にしたような感じです。体幹の問題もあるとは思いますが、背中の筋肉が十分になくてふらついてしまいます。そういう子は仰向けが多くハイハイを十分にしていないように思います。赤ちゃんの体というのは段階的に発達していきます。ひとつできたら、その次ができるようになるという感じです。前のステップを飛ばして次へいってしまうと、本来必要な時期に備わるべき機能を身につけないまま大きくなってしまう。結果的に、ある程度の年齢になった時にどこか飛ばしたステップが体の気になる症状として現れる可能性もあると考えられます。育児書を見るとみんなが同じ時期に同じようなことができなければいけないような印象を受けますが、同じ月齢の子でも発達のスピードは違います。その子その子の様子を見ながら大人が発達を促してあげる必要がありますね。
あとは、よく噛まずに飲み込んでしまうという話も聞きます。中には時々吐いてしまう、という子もいますね。顔の筋力が弱くなって、お年寄りの顔と子どもの顔が同じよう見えて、目が垂れ下がっていて口元が緩んでいるんです。
最初の口が開きっぱなしの話につながりますが、最近は虫歯だけの治療だけでは症状が改善しなくなってきました。例えば歯ブラシだけをやっていれば、口の中が虫歯にならないかっていうとそうではないんです。汚れがすごくきれいにとれてるのに口の中の細菌が少なくならない、口が開いていて汚れが全然とれない、歯肉の炎症が引かないという子がとても多いです。なぜだろうと思って顎骨の発育の勉強もしたところ、現代のお子さんたちは歯列矯正の分野からも小児歯科の分野からも口が開いている子が多く報告されています。呼吸が浅くて夜眠れない、アレルギー体質で鼻が詰まってるという状態の子がいるのです。口の中だけでなく体全体になんらかの支障や健康被害が出ている子どもたちが多いということを知りました。矯正治療をやることによって、口の開きは治っていきますが、歯と筋肉の関係をみると筋肉の力の方が強いので、筋肉に悪いクセがあるとせっかく整えても元に戻ってしまうんですね。矯正治療をする時も良いクセづけ、つまりは良い土台が赤ちゃんの頃からできている子は治りが早いです。
Q. 歯科医師さんの目線でお口の健康と抱っこの関係性についてどのようにお考えですか?
佐藤先生
正しく抱っこされていることで、口が開きっぱなしになることを防げ、深い呼吸ができるようになります。そうすれば不眠症状、集中力の欠如なども改善されますね。また、正しい姿勢を保てるのでよい土台(筋肉)ができ、噛み合わせもよくなります。将来歯科矯正が必要になったとしても、治療がスムーズです。お口の健康という観点からすれば、抱っことおんぶは0歳のうちからできる大切な動作のひとつです。正しい姿勢で抱っこすることで、赤ちゃんの発達を促すことができると考えています。成長してからの身体のマイナートラブルも減るのではないでしょうか。
かなりの数の親子がこのクリニックに来てくれているように思いますが、まだ歯医者に来るところまでままならない人もいます。すべての人にアプローチするのは難しいですが、少しずつこういったことに興味を持っていただいて、地域に広められたらと思っています。
北極しろくま堂では、横浜山手キッズデンタルパークでも毎月第一金曜日に抱っこ教室を開催しています。抱っこひもメーカーとして、医療従事者の方と協力しながら抱っこやおんぶの大切さをお伝えできる場が増えていくことを大変うれしく思っています。どちらのクリニックも、参加費無料、患者さん以外の方も参加可、予約制です。ぜひお近くの方は足をお運びくださいね!
次号予告
北極しろくま堂 新シリーズのご紹介(仮)
新年最初のメールマガジンでは、今後新たに展開する新シリーズのご紹介をいたします。北極しろくま堂の抱っこひもの機能性はそのままに、そこに新しいデザイン・伝統技術の風を取り入れた、定番商品よりもちょっとプレミアムなシリーズです。シリーズ名や詳細は2019年の最初に発表します!
編集後記
あっという間に12月。クリスマスや年末年始の準備でお忙しいことと思います。あたたかくしたお部屋の中でごちそうを食べながら家族団らん、しあわせな時間ですね。
今月の特集では歯医者さんでの抱っこ講座についてお送りしました。麻生キッズデンタルパークさんは地元静岡でとても人気のあるクリニックです。最初に講座のオファーをいただいた時は、「あの麻生さんからご依頼!?」とびっくりしてしまいました。今回取材でお伺いしたところ、北極しろくま堂のカスタマーセンターにご来店ではなく、あえて麻生さんの講座に参加したいという方がいらっしゃるようです。お店ではなかなか抱っこやおんぶのおはなしを時間をかけてすることができないので、こういった場所をいただけることをありがたく思っています。もちろんカスタマーセンターでも抱っこやおんぶの練習をしていただけますし、ご質問にもお答えしますので、どうぞお気軽にお越しくださいね!
SHIROKUMA mail editor: MK②
EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mai Okai
Writer Mai Katsumi, Masahiko Hirano
Copy Writer Mai Katsumi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Nobue Kawashima