布製抱っこ紐の代表格,スリングって少し難しそう。ベルトもないのに、赤ちゃんは落下しないの? はい、すべて問題ありません。ベビースリングは赤ちゃんの成長と親の体型にあわせられ、新生児から3歳まで使えます。体格差があるカップルも問題ありません。

スリングユーザーからよく聞くご感想とその理由はー

  • スリングだとよく寝てくれる→赤ちゃんが安全に感じ,リラックスした姿勢になるから。
  • 安定して抱っこできる→密着しないと使えない構造なので、お互いのからだがくっついているから。
  • 肩や腰に負担がかからない→からだ全体で赤ちゃんの体重を分散させるから、一部が痛くなることはありません。
  • 両手が使える→怖くて赤ちゃんから手が離せないようだと、使い方が間違っている可能性があります。

子育ての強い味方になるスリング。安全に使って快適に過ごしましょう〜!

ベビースリングってどんなもの?

赤ちゃんが快適で安全でいられるスリング。そのスリングにもさまざまな種類があります。

ベビースリングとは

ベビースリングとは、赤ちゃんを抱っこ(やおんぶ)するための一枚の布と2つのリングからなる抱っこ紐です。「スリング」(Sling)は直訳すると「吊り下げる」という意味になりますが、実際にはぶらぶら吊り下げるのではなく、身体にぴったりくっつけて抱きます。素手で胸とお腹をぴたっとくっつけて抱っこしている状態を腕の替わりに布が巻いているというイメージです。また一般名称として、布を使って腰に抱くことを「スリング」と呼んだりします。

ベビースリングは1980年代に布の端にリングが二つある現在普及しているカタチが完成し、商品として欧米や日本に拡がりました。2000年代中頃以降には韓国にもスリングのメーカーがありました。スリングを含む布製抱っこ紐で抱っこやおんぶをすることをBabywearingと呼びます。その愛好会は21世紀以降世界中にひろがり、ここアジアでも2008年にはマレーシアでBabywearingのグループができ、2014年にはシンガポール、2018年頃(詳細不明)にはフィリピンにも愛好家のグループができています。
スリングはおんぶができないので、布製抱っこ紐でも初心者向けの道具です。しかし着脱のしやすさや、子どもが寝たときにスムーズに下ろせるなど、使いやすい点はたくさんあります。

ベビースリングの種類

スリングには様々な種類があります。
リングスリング
布端にリングが2つついているもの。大きさの調整がしやすい。体格差のあるカップルも共有できる。他のスリングに比べると若干嵩張る。

顔が近いからコミュニケーションも◎

パウチ(リングなしスリング):
一つの輪っか状になったもので、さっと使える。体格差のあるカップルは共有負荷。サイズ選びを間違えると身体的に負担がかかり、安全性も低くなる。
バックル型スリング
調整する部分がバックルになっている。細かい調整はコツが必要な場合もあり、新生児の基本抱きは難しいかも。一度調整するとサッと使える。

また、一枚の長方形の布を縛って使うものもスリングと呼びます。

よく見るリュック式の抱っこ紐との違い

リングスリングで心地良く抱っこできるかどうかは、使用者がどのように密着して赤ちゃんの姿勢をどう整えるかにかかっています。調整範囲は無限大なので、逆に「こうやって抱っこすると心地いいな、赤ちゃんも安心しているな」という感覚がわかるまでは試行錯誤があるでしょう。

一方、主に腰ベルトがついている抱っこ紐(SSC:Soft Structure Carrier)はあらかじめ成型されており、調整範囲はあるにせよ、その中に赤ちゃんを入れて抱っこします。一人一人の体系や姿勢にあった状態にするのはかなり難しく、抱っこやおんぶのインストラクターなどでも時間がかかります。欧米の体系が大柄の国で作られたものは、日本人には大きすぎることもあるので、そのような状況下で「心地よさ」を求めるのは無理があるかもしれません。

抱っこ紐SSC
Soft Structure Career
北極しろくま堂のキュット ミー!
Ring Sling

ただ、腰ベルトがあると、身体の中心部から下半身にかけて赤ちゃんの体重を支えることになります。最初は肩の負担がないので、とても楽に感じられますが、上半身のストラップ調整をやっていないと腰を反らせることになり、お母さんだけでなく赤ちゃんの姿勢も不自然になってしまいます。抱っこ紐が未調整で腰を反らせたまま使用していると、いつも反り腰でいることになり、腰痛の原因になるでしょう。
リングスリングだけでなく、SSCも調整が大事です。調整なしで快適な抱っこは実現できないでしょう。

リングスリングの魅力ってなに?

スリングのなかでも最も普及しているリングスリングを解説します。

リングスリングのよいところ

スリングのよい点の第一、は柔らかい布でできているという点です。親子の身体を包み込むように抱っこします。布は自由に動くので、赤ちゃんの姿勢を整えることができます。赤ちゃんがより柔らかな、自然な素材に包まれていることが好ましいのであれば、スリングは問題なく赤ちゃんに優しい素材と言えるでしょう。

第二の点はお洗濯が簡単二できるのも赤ちゃん用品としては嬉しいところです。リングスリングはリングが洗濯槽にあたると洗濯機を傷めるので、ネットにいれて洗ってください。
最近では輸入品のなかにシルク(絹)が混紡された製品がありますが、シルクやウールなどの動物性の糸を使った製品は洗い方に注意が必要です。また、虫食いが発生することもあります。

リングスリングはいつからいつまで使える?

リングスリングは生後すぐから使用できますが、万全を期すためには生後2週間ほどは待った方が無難です。もし呼吸器系に問題がある場合は、だいたい2週間ほどでわかるそうですから、異常がないことを確認してから使った方が安心できます。

いつまで使用できるかは、スリングの耐荷重によりますが、日本の百貨店などで販売されている製品は耐久試験などを受けてパスしたものですから、表示されている耐荷重によるものと考えてよいでしょう。通常は15キロまでは使用できるはずです。15キロはだいたい3歳くらいと覚えておいてください。
また背が高くなってくると、装着者の正面に抱っこしているときは足元が見えづらくなります。そのような場合はだんだんと腰抱きに移行していくと親子とも快適に使えます。
SSCでも腰抱きできる製品もありますが、紐を付け替えたりする必要があり、その使い方自体があまり普及していません。

足元がみえるように抱っこした状態

リングスリングのデメリット

リングスリングだけではなく、布製の抱っこ紐には安全ベルトはついていません。正しく使用できていないと、姿勢が悪くなるばかりか、落下するなどの危険も伴います。
リングスリングでちゃんと抱っこできているかどうかの簡単なチェックポイントは、抱き終わったときに両手を離しても怖くないかどうかです。とても不安で怖くて赤ちゃんから手が離せないという場合は、どこか装着が間違っているか、引き締め方がゆるく不安定になっています。上の写真は女性が赤ちゃんの背中に手をおいていますが、これは支えているのではなく、手を添えたくて触れているといった風情ですが、このようなものが安全に抱けているという状態です。

リングスリングの使い方

リングスリングの基本的な使い方は、「基本抱き」といいます。
これは日本小児整形外科学会が推奨している「コアラ抱っこ」をスリングで実現するものです。抱っこができたら、以下の点をチェックしてみてください。

・おでこか頭頂にキスができる位置か(Kissing Position
・お尻が丸くカーブしているか(Cカーブ:背中上部が丸まっているのではなく、腰を中心に丸くなる)
・膝が前方に向かって開くM字開脚になっているか(Squat Position

画像出典:hipdysplasia.org
画像出典:International Hip Dysplasia Institute
https://youtu.be/NtKSOGokP1Y

リングスリングの注意点

前かがみにはご注意を

どの抱っこ紐にも言えることですが、抱っこしているときにやってはいけないことは、前かがみになる動作です。
スリングには赤ちゃんを縛るような安全ベルトはついていないので、もし装着した大人が深くお辞儀をしてしまうと赤ちゃんが頭から落下する可能性があります。床に落ちたものを拾う場合は、膝を曲げてしゃがんでください。

しっかり座らせる

赤ちゃんの脚がM字型になっていることは、産院でのおむつ替えの指導などで聞いていると思いますが、M字のイメージについてもう少し詳しく解説します。
赤ちゃんのM字はスクワットをするときのように、お尻が奥まった姿勢をイメージしてください。カエルが窓ガラスにぺたっとくっついているような、脚をま横に開いた姿勢ではありません。

脚の開き方のイメージ
赤ちゃんの開脚
抱いたときの脚のかたち
画像出典:International Hip Dysplasia Institute

まとめ

この記事ではリングスリングについて解説しました。
1-2で長方形の布をしばってスリングにすることもできると書きましたが、「ロビンズ・ヒップ・キャリー」というベビーラップのひとつの方法などもあります。
布製の抱っこ紐は使えるようになるととても便利で、他のものも工夫して楽しみたくなるものですが、その入り口としてスリングはとても使い勝手のよい製品です。
ぜひスリングを使いこなして、赤ちゃんとの蜜月を楽しいものにしてくださいね!

*この元記事は2018年8月に掲示されたものです。2021年10月に加筆修正し再掲しました。