2010年3月26日付けにて、国民生活センターから『スリングや抱っこひもなど赤ちゃん用子守帯に注意 -窒息、転落、股関節脱臼の危険性も-』が報道発表資料として提出されました。これを受け、各報道機関による報道がなされ、当社にもご不安を感じる消費者の方々からお問い合わせをいただいたことがあります。
このことについて、当社では以下のように対応しておりますのでご報告します。
同報道発表資料に基づきそれぞれ回答させていただきます。

調査結果の概要

危害情報システムに寄せられた事故事例

ここでは事故例を挙げています。当社製品と同様の種類2点での事故例を抜粋して回答します。

窒息の事例

子守帯でおんぶしたところ、顔と背中が密着しすぎて窒息しそうになった例(2008年10月)が報告されています。おんぶひもの使用は赤ちゃんの位置が低すぎるとこのような事態に陥る可能性があると考えています。当社ではおんぶひもの使い方にあるように、昔から日本人がおこなってきたような赤ちゃんの視線が使用者の肩越しに前を見られる程度の高さでおんぶするようにご指導しております。この程度高い位置でおんぶすることで、窒息に陥るような体勢にはなりません。

脱臼の事例

報告書では「長方形の布で赤ちゃんを包むだっこひも」と表されていますが、これをスリングとして回答します。スリングの使用についてはスリングの使い方で説明しているように、新生児であっても股関節を開きかつ縦方向に抱っこするように指導しているため、予防効果はあっても脱臼させるようなことは考えにくいです。また、この状態ではスリングで横に抱いたように赤ちゃんが丸くなる過ぎることがなく、アメリカやカナダの事故例のように気管支が閉塞してしまうことがありません。

アメリカ・カナダからの報告

かねてから当社が加盟している日本ベビースリング協会(現在は活動停止中)では小児整形外科学会などと協議を重ねており、2007年から新生児~3、4ヶ月児は必ず開脚した状態でスリングを使用するように指導をしています。また今回回収対象となっているだっこひも(報告書7ページ参照)は日本ではスリングの種類としては認識されておらず、使い方や素材もまったく違うものです。

医師からの助言

当社のスリングの使い方はここで医師が述べられている推奨の使用方法になっております。急に反っくり返る赤ちゃんに対しては、レールの引きが甘いと考えられますが、当社の使用方法に沿ってご使用いただければ落下の危険はほとんどないと思われます。

消費者へのアドバイス

子守帯には製品安全協会(SG)の認定品がある旨が記載されていますが、スリングはこの子守帯の種類に加えられていないため、SGの認定を受けることができません。当社ではSGマークと同様の試験を同じ試験場で受けており、安全性を確認しています。
当社のスリング「キュット ミー!」以外でご購入のお考えの方も、販売者または製造者が第3者による試験を受けて安全性を客観的に示しているかをご確認なさるとよろしいと存じます。

〔参考資料〕について

アメリカのCPSCからの報告を受けて、スリングの使い方を図入りで説明しています。(4ページ)日本では生後4ヶ月児までの赤ちゃんをスリングで横抱きにすることはないため、ここで示されている間違った使い方はしないはずです。 しかしながら、主に輸入品を取り扱う他業者様においては、新生児の横抱きなども紹介されている場合もあります。

画像引用:Standard Consumer Safety Specification forSling Carriers ASTM

欧米の赤ちゃんは日本人に比べて股関節脱臼をしにくいため、横抱きにしても問題がないことが多いです。一方、日本人の赤ちゃんは先天的股関節脱臼(生後4ヶ月くらいまでも先天的に含める)になりやすいため、横方向に抱いて布やお腹で赤ちゃんの膝を押してしまうことを避けた方が安全です。

スリングの誕生とひろがり

スリングは、形こそ現在と違っていますが、何千年もの間、あらゆる文化圏で使用されてきました。繊維から織物をつくる文化が生まれるずっと前にも、スリングは動物の皮を原料として使われていたと考えられています。
日本ではベビーキャリアーも含めて一概に「抱っこひも」と呼ばれていますが、スリングや伝統的なおんぶひもはBaby Wearing(赤ちゃんをまとう、身につける)するものであり、リュック式の抱っこひもやおんぶひも、ベビーカーはBaby Carrier(赤ちゃんを運ぶ)です。 赤ちゃんはもともと授乳してくれるParentsの衣服にくるまれて育ってきていたのであり、それゆえBaby Wearingの商品は密着性が高いのです。使用者と密着し行動をともにするからこそ使用者も赤ちゃんにも負担が少ないのです。 スリングを使うと赤ちゃんの体重が軽く感じられるのは、使用者と密着しており、赤ちゃんと使用者の重心があまりぶれないからです。10キロの米袋を四六時中持ち歩くのは骨が折れますが、妊娠中に10キロ太っても(重さが身に付いても)マタニティビクスができますね。

1981年、レイナーガーナー博士は新しい技術と以前からの考え方を織り交ぜ、この調節自在のパッド入りスリングが生まれたのです。ガーナー医師と米国CDM社が数年間にわたってテスト、改良をした後、採用しました。 80年代中ごろにOTSBH(米国CDM社)を創設したDeeDee Devinは、パッドの分野を細分化しました。、サイズもバラエティに富み、他にもたくさんの改良がなされ、商品としてのスリングが誕生しました。後にレイナー博士はスリングの専売特許をシアーズ博士に売ったのです。

レイナー博士とBill & DeeDee Devin夫妻は子育てについて勉強し続け、人類のための偉大なる前進だと信じてこのスリングを改良し続け、奨励してきました。

日本では1980年代後半より母乳育児を支援する団体「ラ・レーチェ・リーグ」のメンバーにより輸入され、広められてきました。2001年にシアーズ博士の「ベビーブック」の日本語版が翻訳・出版されるとスリングの知名度が一気に上昇し始めました。2003年10月にはメーカーや販売店により「日本ベビースリング協会」が発足しています。

北極しろくま堂は2000年12月よりスリングの販売を始めています。