これまで発表されてきたさまざまな研究では、お父さんには子どもを「外の世界へ誘う」役割があるようです。
Paquette(2004)は、この父子の絆を“activation relationship”として理論化しています。
“activation relationship”は、父親は子どもを驚かせたり、少し挑戦させたりしてリスクを取らせつつ、同時に安全を確保することで、子どもが未知の状況でより勇敢にふるまえるよう学ぶ、というものです。また、この関係は主に身体的な遊びを通して育つと考えられています。
父子の絆づくりの実践方法
では、どうしたら父子の絆づくり、その前提になる育児参加が進むのでしょう。今回は働き方や生活の具体的な方法を提案します。
結論は3つ。したの3つを実践することで、子どもを外の世界に羽ばたかせるお父さんになれそうです!
- <働き方>最初の8週間に“産後パパ育休”を使う(短くてもOK、分割もOK)
- <働き方>育児の最大の敵は「長時間労働」なので、時間の設計から変える(残業・通勤を含む)
- <家庭内>「手伝う」より「担当する」へ:夫婦で“見える化”してズレを減らす
以下、国内の総説論文や公的データで言える範囲で理由を説明します。
1)産後パパ育休を最優先にする理由
日本では、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」があります。2回に分けて取れるのが特徴で、通常の育児休業(原則1歳まで)とは別枠です。
現状では、厚労省の「令和6年度 雇用均等基本調査」では、男性の育休取得率は40.5%(前年度30.1%から+10.4ポイント)まで上がっています(※産後パパ育休を含む)。
「取る人が増えている」だけでなく、取ることで何が起きるかについても国内で研究があります。日本総研のレビューでは、男性が育休を取得した人のほうが、取得していない人より平日の家事・育児時間が増えると示した研究などが紹介されています。
ポイントはシンプルで、育休は “気持ち”より“生活の分担を現実に変える機会” になり得る、ということです(もちろん職場条件などで個人差はあります)。

2)日本で父親の育児を左右しやすいのは「長時間労働」
日本の父親の育児時間について、2010年以降の国内研究をまとめた包括的レビューでは、父親の育児時間と関連しやすい要因として、父親の労働時間、配偶者の就業形態、性別役割分業の意識、夫婦の認識、妊娠・出産イベントへの参加などが挙げられています。
つまり、日本で「もっと育児したい」気持ちを盛り上げるには、精神論より先に、時間の構造(残業・通勤・会議の入れ方)を触る必要がある、という整理になります。
ここで役立つのが制度面の後押しです。
厚労省の資料では、2025年4月から段階的に、育児期の柔軟な働き方に関する措置が拡充されることが示されています(例:育児のためのテレワーク=リモートワーク導入が努力義務化など)。
リモートワークは通勤時間がないぶんだけでも、子育て世代には助かりますよね。
「育休を取る/取らない」だけでなく、取った後に続く働き方もセットで考えるのが、日本では特に重要です。
3)父親の”やったつもり”と母親が”助かった”実感にはズレがある
これは世の母親はいちどは感じたことがあるでしょう。実際に研究結果でも明らかにされています。
国内の文献レビュー(日本公衆衛生雑誌)では、父親が積極的に育児に関わっていると母親が認知している場合、母親の育児負担感が低く、育児の幸福感・満足感が高い傾向が示されています。
一方で、このレビューは「父親が自己評価した育児参加の度合い」は、母親の負担感などと直接には関連しない可能性も示唆しています。
ここから言える実践的なコツは、“量”だけでなく“認識の一致”を作ることです。おすすめは難しい方法ではなく、
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「何を誰が担当するか」を言語化する(毎週の病院予約、保育園連絡、夜間対応など)
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終わったことが相手に伝わる形にする(連絡帳・アプリ・メモで共有)
といった、ズレを減らす工夫です。これは「父親の関わり=一緒に遊ぶ時間だけ」ではなく、生活を回す責任まで含む、という整理にもつながります。
まとめ:まずは育児に参加、その具体的な方法
この記事では具体的な参加方法(育休など)と、育児への関わりは父親の自己評価ではなく、父母の「こうやって分担したよね」という認識の一致が重要だということがわかりました。
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産後8週の制度(産後パパ育休)を最初に使う
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長時間労働を前提にしない働き方へ寄せる(制度改正の流れも追い風)
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夫婦の認識ズレを減らす:担当と見える化
「理想のイクメン像」を追うより、家の中の現実が少し回りやすくなる設計を積み上げるほうが、これまでの研究結果と合致しますし、きっと母親の負担感も減る=夫婦仲もよくなるのではないかと思われます。
ちなみに、子どもに少しリスクをとらせつつ冒険させる…というのは、新生児などの低月齢の時期ではありません。体幹がしっかりしてきて、お座りができるようになった頃からで十分です。古い研究では、父親はだいたい生後8ヶ月頃からの関わりが多くなるとされています。
それまではしっかり家庭内のサポートをお願いします。
参考文献
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加藤承彦ほか(2022)「父親の育児参加が母親,子ども,父親自身に与える影響に関する文献レビュー」『日本公衆衛生雑誌』69(5), 321–?(オンライン公開あり) jsph.jp
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(著者情報はPDF内要確認)「日本における父親の育児時間に関連する要因についての文献レビュー」『看護実践学会誌』36(2), 51–62, 2025 kango-ji.com
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厚生労働省(2025)「令和6年度 雇用均等基本調査 結果概要」— 男性育休取得率40.5% 厚生労働省
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厚生労働省「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度説明 厚生労働省
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厚生労働省(2024/2025)「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月から段階的施行)」 厚生労働省
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井上恵理菜(2022)「男性育休取得を阻む要因とその解決策」『JRIレビュー』2022 Vol.4 No.99(レビュー内で関連研究を紹介) JRI
