<入院中のママ:文章を読むのはたいへんなので、動画だけでも見てくださいね>
生まれたばかりの赤ちゃんを助産師さんが胸の前まで連れてきてくれました。でもどうやって抱いていいのかわからない! という気持ちはけっして珍しいものではありません。
ふにゃふにゃの赤ちゃんをどうやって抱っこするのか…考えてみると誰も教えてくれないし、目の前の赤ちゃんは母親学級の人形とは違うし! コロナ禍で母親学級もオンラインになり、初めて抱っこする赤ちゃんが自分の赤ちゃんという方もいらっしゃるでしょう。
泣いているので抱いてあやしても泣き止まなくて途方に暮れたという経験をお持ちのママ(あるいは今その最中で絶賛ギャン泣き中の赤ちゃん)もいるでしょう。今回は抱っこが怖い(>_<)ママに送る抱っこのしかた徹底解説です。
基本は自分がされたい抱き方
抱っこは難しくありません。わからなくなったら、「自分がこうやって抱かれたらどうかな?」と想像してみてください。巨人があなた(ママ or パパ)を抱っこしたら…。脇を押さえられて空中に宙吊りになったり、股に手や腕を差し入れられたり、あるいは体がねじれていたら気持ち悪くないでしょうか。
あなたが愛おしい人にされたいように、赤ちゃんを抱っこするのが基本です。
動画で確認してみましょう
抱き上げ方と抱き方、おろし方の動画です。
横に抱く? でも縦の方が好きみたい→OKです
結論から言うと、生まれたばかりの赤ちゃんでも首さえしっかり支えてあげれば縦方向の抱っこでも問題ありません。
新生児の赤ちゃんは首がぐらぐらしています。今の日本では「首がすわっていないから横抱き」というイメージが広がっていますが、世界的にみるとそうでもありません。日本でも1980年ごろまでは縦方向もしくは斜めの抱っこが指導されていました。
もちろんどの文化圏でも首と頭は支えます。そうしないと脳が揺れすぎて『揺さぶられっこ症候群』になりかねないからです。
それに体がふにゃふにゃな赤ちゃんは縦方向に抱っこしても背中がゆるくカーブしています。このカーブはその時期の赤ちゃんにとって大切なことなので、無理に伸ばす必要はありません。
いずれにして赤ちゃんはこの世に出てきた時から重力を感じています。上と下がわかっています。いずれ重力の中で活動していかなければならないので、仰向けにされてお腹に地球の重力を感じようが、縦方向に感じようが…そんなに差はありません。(ただし,うつぶせ寝だけは別。参照:Siddicky,S et al., 2020)
体はなるべくくっつけて
妊娠して出産した人なら誰でも経験があること。それは誰かに抱かれた経験です。もとい、世界中に生きている人類でヒトを抱っこした経験がない方はいますが、抱かれたりおぶわれたりした経験がない人は存在しません。ヒトは人に触れられないと生きられないようです。オムツ交換などでちょっと触れるだけでは足りません。ちゃんと触れる=抱かれたりおぶわれることが成長には必要なのです。
抱くことは「運ぶ」ことと違って人と人がくっつきます。お盆に赤ちゃんを載せるようにして移動させているのなら、それは抱いているのではなく運んでいるのです。そして抱っこは成長に不可欠なもの…。つまり肌と肌がくっついていることは赤ちゃんにとって欠かせない経験です。衣服を着ていても構いません。衣服を通しても人は触れられているということは感じられます。
とにかく、抱いている時にはなるべく体の表面積がたくさんくっつくようにしてください。
ときどき赤ちゃんをどうやって扱ってよいのかわからなくて困ってしまい、ささげるように赤ちゃんを抱こうとする方がいます。経験がなくて不安が強ければ無理もないでしょう。でもね、赤ちゃんは離されているよりもくっついている方が安心なのです。
なるべく自分の体にくっつけて抱っこしましょう。
赤ちゃんにはらくな姿勢がある
赤ちゃんが好きな姿勢があります。いちばん嫌いなのは硬い床に寝かされるような背中がまっすぐになってしまう状態です。
少し背中が丸くてM字の脚=コアラ抱っこ
日本小児整形外科学会が推奨している「コアラ抱っこ」というものがあります。これはコアラが木にくっついているような姿勢をキープした抱っこのことです。コアラ見たことない? あ、そういえば筆者も本物のコアラを観たことはありません。
違う表現をすると、いわゆる「ヤンキー座り」の姿勢です。
・少し脚を広げて立ちます
・つま先を少しだけ外側に向けます
・そのまましゃがみます
こうすると背中が緩くカーブしてお尻が下がって膝があがりませんか? この姿勢がコアラ抱っこの姿勢になります。もちろん赤ちゃんは大人のように脚が長くないので、全体のバランスは変わりますが、背中が緩くカーブ+開脚して膝が少し持ち上がった状態であることはわかりますよね。
首がすわっていない時期はあとは頭部を寄り添わせて、後頭部や首回りを掌(てのひら)などで支えてあげることが必要です。
これは怖いです。やめましょう
反対に赤ちゃんにとって怖い抱っこもあります。
これをし続けると赤ちゃんは落ちるのが怖いので背中に力を入れ続けます。そして背中や首がこるようになってくるのです。
宙に浮かされている抱っこ
赤ちゃんの脚をおなかにまたがせて(またがせることは良いことです)、首をてのひらで支えておなかを上にむけ体から離す・・・。赤ちゃんの顔がよく見えるのでやりがちですが、赤ちゃんは背中全体が支えられずに宙に浮いています。ご自分がされたらどうでしょう? 落ちるのが怖くて全身に力が入りませんか。
捧げ持つ抱っこ
どうやって抱っこしていいのかわからないので、大切なものを持つように抱っこしてしまう・・・。お盆にのせたお茶を運ぶよう・・・。
お気持ちはよくわかります! だってどのくらいくっついて良いかわかりませんものね。
赤ちゃんは生まれたときから重力を感じているので、不安定に宙に浮かされると怖いです。もっと支える部分を増やすか、あるいはママの体にくっつけてあげると怖さがなくなります。
どうしても横抱きにしたい場合は、腕で浮き輪のかたちをつくって、そこにすっぽりとお尻から入れるようにしてあげましょう。この時にも、自分の体に引き寄せておくのは忘れずに。
怖くはないが居心地は…?
股幅が狭く、股からつり上げられられるような状態になる抱っこ紐があります。しかも前向きだったりして・・・。貼り付けの刑のよう。これは赤ちゃんが気の毒です。
まず赤ちゃんはおなかを守られたいので、おなかをさらけ出すような状態は不安になるでしょう。また股でつり下げられるって、おむつをしているにせよ、股に重さがかかるし体は心地良く締め付けられているというよりもきつめに…フォローされてしまっています。これではつらいのでは? 日本人の場合は特に股関節によくないのでこれはお勧めできません。
究極の泣き止む抱っこ
赤ちゃんには「明日のテストどうしよう?」とか「職場のストレスが」なんて悩みはないので、居心地が良くおなかも適度で、暑くも寒くもなく、お尻はすっきり、体の調子も良ければそれほど泣きません。居心地が良い抱っこの状態については前述しましたので、ここでは更に泣き止むようなもっとリラックスする方法を解説します。
降ろす時にはここに注意
抱っこしてやっと寝てくれた! この喜びは経験していないと分かちがたいですよね。でも布団に降ろした途端に気付かれて泣かれてしまった→抱っこしてやっと寝た→・→・→・・・(無限ループ2時間コース?)降ろし方にコツがあります。
- 少しだけ背中が丸くなるところに降ろすこと(ふわふわな布団という意味ではありません)
- 最後におなかが離れるように、密着したままで降ろすこと
上の画像では、授乳クッションの下部にバスタオルを詰めて、その上にバスタオルを掛けています。こうすることで、鳥の巣のようなベッドができ、赤ちゃんは脚を少し上げた状態=M字開脚で寝ることができます。
もちろん、降ろす先の布団が冷たすぎたりすると起きてしまうので、ぬるめの湯たんぽなどをつかって暖めておくのも成功率を高めます。
少し背中が丸くなるような寝床は授乳クッションや毛布で鳥の巣のような形状をつくって、そこにバスタオルなどを掛けておくと良いでしょう。ただしこれは赤ちゃんがよく動くようになってずり下がってくると背中のカーブがきつくなるために呼吸しづらくなることがあります。要注意です。(ママは見守ってあげてください)熟睡したのを見計らって平坦なお布団に寝かせましょう。
抱っこして歩いても大丈夫?→OK
抱っこして歩き回ると赤ちゃんが泣き止む経験をしたママも多いと思いますが、これはほ乳類の「輸送反応」といって、科学的にも立証されています。詳しくはこちらをご覧下さい。
泣いているときにはM字開脚+頭部を守ってあげながら、お部屋の中を歩いてみてくささい。そろりそろりじゃなくても良いのです。いつも歩くように歩いてください。赤ちゃんはリラックスしてきます。部屋が狭くて歩き回れなければ足踏みでも良いです。この時には赤ちゃんの頭が揺れないようにしっかり自分に寄り添わせてくださいね。
前向き抱っこは推奨しません
あぐらを組むように脚をまとめて前向きに抱っこしたら泣き止んだ! というご経験をお持ちのママもいるかもしれません。前向き抱っこは時々なら良いかもしれませんが、小さいうちから常時前向きの抱っこはあまりお勧めできません。前向き抱っこで泣き止んだのは、一度に視界に入る情報量が多すぎて驚いている可能性もあるからです。
不安なときにはあなたはどんな姿勢を取りますか? 不安だ〜! 怖い〜! といいながら大の字にひっくり返ったり、反り返ったりすることはありませんね。おなかを守る姿勢になると思います。ヒトが大事なのはおなかと頭部です。不安なときには本能的にそこを守る姿勢をとります。赤ちゃんもこの世に生まれてきてまだまだ不安なことや驚くことが多いので、そういう時にはおなかを信頼できる人にくっつけて安心したいものです。
まとめ
いかがでしたか?
目の前の赤ちゃんがぎゃん泣きして途方に暮れているママ。筆者も同じ経験があります。「もう好きなだけ泣いてくれ〜!」とお手上げ状態だったことも何度もありました。その時にこの抱っこ法を知っていたら、どれだけ楽だったかと思うと…。あとは孫でやり直すしかなさそうです。
抱っこが怖いママは赤ちゃんをどう扱って良いのかという”程度”がわからないのだと思います。赤ちゃんにはどんどん触れてください。触ることはとても大事です。そして赤ちゃんを持ち上げるなら、心地良い姿勢を取らせてあげましょう。それがお互いが安心できる抱っこになります。
迷ったら【首と頭は守る+自分がそのように抱かれたら気持ちよいか、イヤか】で判断してもそうそう間違っていません。ほんの少しの想像力で乗り切れます。
迷ったらとにかく触る、自分に置き換えて想像する。やってみて下さいね!