リングスリングにはリングが欠かせません。リングは大は小を兼ねず、また小さいものは厚手の布には使いづらいものです。北極しろくま堂では3種類のリングを製造し、アルミニウムリングをアメリカのスリングリング社から直接輸入しています。
今回は「北極しろくま堂の安全なスリングリング」ができるまでをご紹介します。
北極しろくま堂のスリングリング
大切な赤ちゃんを抱っこするスリングのリングは極めて高い安全性が求められます。
だから、わたしたち北極しろくま堂はスリングリングにとことんこだわりました。
スリングのリングとは
わたしたちは、オリジナルスリング「キュットミー!」に
ナイロン製のリングを使っています。
- ナイロンはプラスチックの類でも粘り気が強い性質をもっています。したがって、万が一リングが耐えられる重さ以上の力が加わるような事があったとしても、突然パキッと真二つに割れるのではなく、まずはぐにゃりと変形するようになっています。
- スリングの布が接する面が多ければ多いほど、スリングリングの強度は高くなります。ナイロンならば、金属のリングほど重くならずにこれを実現させることが可能です。
- ナイロンを含むプラスチック製品は、紫外線を長く浴び続けると品質が劣化することがわかっています。このことから、北極しろくま堂のスリングリングにも紫外線照射試験を実施しました。その結果、わたしたちのリングは紫外線を浴び続けた状態でも10年後に135キロ程度の加重に耐えられることが証明されています。
- ナイロンは子供服のボタンにも採用される安心素材。「子供が舐めても大丈夫」という食品衛生法で定められた基準の検査をすべてクリアしていることから、北極しろくま堂のスリングリングは赤ちゃんの口に入っても健康に害をおよぼしません。
- (以前製造していた)ワイン染めのスリングには、リングの形が出来上がってから色をのせている“後染め”のナイロンリングを採用しています。このリングも食品衛生法を基準とした検査を実施し、同様に健康に影響が無いことがわかっています。
オリジナルのスリングリング3タイプについて
「キュット ミー!」は、テールもふくめると装着する人の体の半分近くを覆うため、安全性はもちろんのことそのファッション性を大切にすることも重要だとわたしたちは考えます。より多くのお母さんやお父さんにお使いいただけるものをご提供するためにも、常に新しい柄や質感をもった生地を取り入れるよう努めてまいりました。こうした新しい布とのかみ合いを研究する中で登場してきたのが、これら3つのリングです。装着時のスムーズ感にも徹底的にこだわりました。
※現在は主に楕円形リングを使用してキュット ミー!を製造しています。(一部商品で楕円形リング大(グレー)を使用しています。)
北極しろくま堂のスリングリングは第三者機関による強度試験を実施し、新生児から16キロ程度までのお子様を安心して抱っこしていただける強度があることがわかっています。
いずれも耐荷重400kg以上の試験結果が出ています。設計から製造まですべて日本製で、素材には強度が劣る再生ナイロンは使わず、すべてバージンナイロンを使用しています。
スリングリングの製造工程
ここは東大阪市にある創業100年以上の老舗町工場。
ボタンづくりを本業とし、これまでにつくったボタンの数は億単位です。ボタンの注文が後をたたない一方で、工場では車のヘッドライトや携帯電話の部品、果ては調理器具にいたるまでありとあらゆる形を目にしました。「型」を必要とするものならどんなものでも対応するそうです。
今回はそんな町工場で出来上がる北極しろくま堂のスリングリングの工程をご紹介しましょう。
ロゴをデータ化する
北極しろくま堂のロゴイメージをもとに、CADを使ってリングに彫り込む文字と絵柄をデータ化します。
金属の型に彫り込まれ、最終的にスリングリングが成形されたときに実際のロゴと変わりのないものを再現させるため、線の太さや高さを調整します。
ロゴデータをアクリル板に彫り込む
アクリルの板に、出来上がったロゴデータを彫り込みます。
マスターでリングのかたちをつくる
工場の一角にある、コンクリートブロックで囲まれた2.5畳程度の狭い小部屋。
職人さんがバーナーの真っ青な炎でごおごおと大きな音をたてながら熱しているのは、「マスター」と呼ばれる大元の型です。
高温に熱されたマスターの外に枠をはめ込み、そこへ約500℃で溶かされた合金を流し込むところ。
合金が固まると、リングの「型」が出来ます。
流し込んだ合金に圧力をかけて固める作業。
下の画像は出来上がったばかりのリングの「型」。
ところで、これらの作業にマニュアルはありません。マスターが十分熱された頃合いを見はかるのも、合金を固めるときにかける圧力の調整も、すべて職人さんがもつ経験と手の感覚だけがたよりです。
旋盤(せんばん)でひく
「せんばんでひく」とは、出来上がったばかりの型を削ったり磨いたりして、後にリングを成形する時に使う鉄製の大きな金型におさまるようにする作業のことです。
画像は、固めのブラシに研磨剤をつけてリングの型をなぞるように磨いているところ。
ロゴの彫り込み
アーム(うで)が二本ついている大きな機械を使います。片方のアームがアクリル版の文字をなぞると、もう一つのアームがそれと同じ文字を型に彫り込む仕組みになっています。
一つ文字を彫り終えて次の文字を彫り込む位置へリングの型を回すのは、機械ではなく、職人さんによる手作業です。それぞれの文字が等間隔で彫り込まれてゆく様子はまさに神業。
磨いて、ゲートをつくる
磨きの粗さは仕上げの美しさに大きく影響します。傷を残さないように丁寧に作業を進めます。
磨きが終わったら、リングの素材となるナイロンが流し込まれる小さな口「ゲート」をつくります。同時にその反対側にも小さな切り込みを入れます。ナイロン注入時に発生するガスを内部に残したままだと製品の強度が下がるため、ちゃんと逃がしてあげるためだそうです。
成型
人の力では持ちあげることもできない鉄製の大きな金型に出来上がったリングの型をはめて、成形機にセット。溶けたナイロンを流し込み、リングをつくります。
リングの型がはまった金型が合わさると、溶けたナイロンが機械の中から勢いよく流れ込みます。その直後に成形機の中を通るホースに水が流し込まれて瞬時に型を冷やし、ナイロンを固める。金型が開くとリングの形になったナイロンがぽろりと落ちてきます。
気候によって車のエンジンがかかりにくいときがあるように、成形機もその日の温度や湿度によって調子がよくもわるくもなるとか。まるで生き物です。町工場ではそういった細かい変化への対処も職人さんの仕事。
こうして見てくると、彼らがいるから、北極しろくま堂の安全なスリングリングが完成する、そう考えずにはいられません。
不要部分のカットと検品
ゲートと、その反対側から出ているひげを切り落とし、検品を終えたらスリングリングの出来上がりです。
たいせつな赤ちゃんに使うものだから、小さなバリも見逃さず、丁寧に検品しています。最後は人の手、職人の目。AIもいいけど、「このリングは赤ちゃんを包むたいせつなものなのね」と検品する心の暖かさもありがたいものです。
工場を見学して
工場のいたるところで目にした重厚な金型の数々。100年の積み重ねで生まれてきたこれらの金型が、様々な業界からの仕事依頼への対応を可能にしているそうです。
「お客様から『こんなものが欲しいのですが』と相談され、それなら30年前につくった金型があるからいくらでもできますよ、といったことはよくあります。」と工場の取締役は話します。
積み上げてきた技術をちゃんと守り抜いてきたからこそ、品質の確かなモノを作ること、そしてそこからさらに新しい技術を生み出すことができる。
長い時間の中で培われた技術を背景に、北極しろくま堂の安全なスリングリングは今日も親御さんと赤ちゃんのよりよい関係を提供し続けているのです。