執筆:園田正世(北極しろくま堂) 抱っこ・おんぶの専門店として2000年創業
初回公開:2021年6月18日 / 最終更新:2026年9月11日
この記事の要点
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腰痛の根本原因は姿勢の反り:抱っこ時に腰が痛くなる最大の理由は、負荷そのものよりも「赤ちゃんを支えるために無意識に腰を反らせた姿勢」をとってしまうこと。
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密着不足が姿勢の崩れを招く:抱っこ紐のベルト調整が緩く赤ちゃんが親の体から離れて下がってしまうと、重心をとろうとして腰を反り、肩や体に余計な負担がかかります。
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正しい高さと密着での改善:肩ベルトやウエストベルトを適切に締め、赤ちゃんを親の体へしっかり引き寄せて高い位置で密着させることが腰痛予防につながります。
おんぶで腰が痛くなった原因と解決法に対し、抱っこでは? というご意見をいただきました。
抱っこで腰が痛い方のほうが多いですよね。腰痛のかたは腰ベルト付きの抱っこ紐または伸縮性のあるかぶるタイプの抱っこ紐を使っているのではありませんか?この記事を読めば理由と解決法がわかります。
おんぶの腰痛記事に合わせて、日本のアニメに絡めないかと考えて探しましたが、そもそも日本人が抱っこで出掛けるようになってからまだ35年くらいなので、あまりないですね。『おおかみこどもの雨と雪』でスリングが使われていたのでそのくらいかな。(トップ画像は2012年『おおかみこどもの雨と雪制作委員会』より)クレヨンしんちゃんにもありそうですね。
腰が痛くなるのはなぜ?
理由は明確です。腰に負担がかかっているということもありますが、それよりも腰を反っている要因のほうが腰痛を引き起こしているでしょう。今回は主に腰ベルトがある抱っこ紐について解説しますが、ストレッチ素材の被る抱っこ紐も同じです。下の図を見てください。イラストが下手なのはご勘弁ください。
腰ベルトがある抱っこ紐で抱っこした場合

- 腰ベルトが斜めになっている
- 赤ちゃんが自分の体から離れる(このときに、肩のベルトを相応に締めれば赤ちゃんが寄り添います)
- 落下が怖いので腰を反る
- 腰を反ると腕(肘)を後方に引く
- 胸を張らないとバランスが保てない
- 脇が開いて『前ならえの一番前の人』のような姿勢になる
商品にもよりますが、腰ベルトはウエストのくびれたところ、またはその少し下の腸骨の上に地面と水平に装着します。そして赤ちゃんを乗せても下がらない程度に締めます。しかし、著者の観察では腰ベルトを前(おなか)に向かって下に下げている方が多いです。講座などでベルト位置を調整すると驚く方が多いです。(「えー、こんなに上ですか?!」)
腰ベルトを適正な位置で地面と平行に締めているかたは腰痛にはなりづらいと思います。
前方に向かって下げている方は、イラストに提示したように腰を反るかたが多いです。

抱っこ紐の腰ベルトを締める位置
腰ベルトはこの位置で水平に締めましょう。必ず取り扱い説明書を読むことをおすすめします。商品によって上辺がおへその位置だったり、単にウエストと記載されていたりさまざまですが、基本は添えられたメーカー提供の写真や図を参考にしましょう。
赤ちゃんが成長したら腰ベルとは下げてもいい?
答えは、「ダメです!」。
腰ベルト付きの抱っこ紐は腰ベルトの位置が重要だと示しました。
では赤ちゃんが成長して身長が高くなったら、腰ベルトの位置を下げてもいいかというと、下げてしまってはいけません。多くの方は腰ベルトを下げることで対処していますが、下げるとどうなるでしょうか?

上の図からわかるように、腰ベルト付きの抱っこ紐ユーザーさんは子どもが成長したら、正面で抱かずに腰に跨がせる腰抱きかおんぶにしましょう。バックル付きの抱っこ紐でもスリングのような腰抱きができるものがありますので、お手持ちの抱っこ紐の説明書をご確認ください。
北極しろくま堂の抱っこ紐ハグリーノは耐荷重は16㎏くらいまでありますが、快適に使えるのは生後1年間と表記しているのは正面で抱くと足元が見えなくなるからです。おんぶや腰抱きができない抱っこ紐は、いくら布や機能に耐荷重性があっても、快適には使えなくなります。
耐荷重性があることと、その月齢(年齢)まで使えるのは別の話です。

腰ベルトがない抱っこ紐で腰が痛い場合の原因は?
理由は同じでしょう。腰を反っていませんか?
赤ちゃんの位置が低いとどうしても手を添えたくなります。少し持ち上げたりします。手が添えられないときには自分の体を反らせて落ちないように調整していませんか。頭部に無理なくキスができる高さを保つのが抱っこ(抱っこ紐)のセオリーです。
余談ですが、下記のイラストの場合では赤ちゃんの位置が低いので歩く度に赤ちゃんの足を押します。そうなると赤ちゃんも一歩ごとに腰を反らせています。

伸縮性のある抱っこ紐が快適に使えるのは赤ちゃんの体重が5~6㎏までとされています。これは世界的に抱っこやおんぶ(babywearing)を教えている専門家の共通認識です。
また、スリングなどの伸縮しない布製抱っこ紐で腰が痛いときには、赤ちゃんを入れるポーチ(ポケット部分)が大きいことが考えられます。LINE(@babywearing)でご相談いただければ、北極しろくま堂のスタッフが手作業で回答しております。お気軽にご利用くださいませ。
まとめ
抱っこ紐は育児をらくにするためにつくられている道具です。それで体を痛めてしまっては本末転倒です。
腰を反らなくてもよいように、調整して使いましょうね。
本稿とあまり関係ないですが、トップ画像につかった『おおかみこどもの雨と雪』のシーンで男性が肩車していますが、日本の昔の絵巻物を調べた研究では、肩車をするのは男性だけだったそうです。肩に載せるのは子どもをかなり上に持ち上げる必要があるので、腕の長さ(体格)も関係しそうですよね。
この記事の根拠について
本記事は、北極しろくま堂が2000年の創業以来、店頭・相談会・LINE相談などで積み重ねてきた実地の観察と経験にもとづいてまとめています。
抱っこ紐と腰の痛み、また伸縮性のある布で赤ちゃんの脚が自重で垂れ下がることの影響そのものを直接調べた学術研究は、私たちが知るかぎり見当たりません。一方で、伸縮素材の抱っこ紐では脚が垂れ下がりやすいことは、日々のご相談の現場で繰り返し確認しています(当社の経験にもとづく観察です)。
なお、「赤ちゃんの脚が自然に開いて膝が持ち上がる姿勢(M字開脚)が望ましい」という姿勢の考え方は、整形外科・小児科の知見でも支持されています。
赤ちゃんやご自身の状態が気になるときは、かかりつけの医療者にご相談ください。抱っこ紐の使い方でお困りのときは、LINE(@babywearing)でお気軽にどうぞ。
参考文献
*これはおくるみの研究であり、「脚が自然に屈曲・外転できる姿勢が望ましい」ことが示唆されています。抱っこ紐を直接比較したものではありません。
van Sleuwen BE, Engelberts AC, Boere-Boonekamp MM, Kuis W, Schulpen TWJ, L'Hoir MP. 「Swaddling: A Systematic Review」 Pediatrics. 2007 Oct;120(4):e1097–e1106. DOI: 10.1542/peds.2006-2083
Pediatric Orthopaedic Society of North America(北米小児整形外科学会)ほか共同. 「Swaddling and Developmental Hip Dysplasia Position Statement」 2015年4月28日.
