新年特別企画 対談
「母として、働く女として」第二部

母として、働く女として

漫画家 ごとう和さん × 北極しろくま堂店主 園田正世

ご自身が子どもの頃のお話や子育てのエピソードも聞かせていただいた第一部につづき、第二部では子育てと仕事についてのお考えをお聞きしました。チャーミングなごとうさんの等身大の姿が垣間見えるお話、お楽しみください。

第一部はこちらから


ごとう
1人目のときは、そうやって手探りでしたが、2人目3人目は仕事場で育てたという気がします。アシスタントさんがいたので、結構面倒を見てもらったりしていました。3人目のときなんて、産後すぐ仕事をしないといけなかったので、仕事机の上に赤ちゃんをのせて、その横でわいわいと仕事をしていたんです。訪問で来てくださった保健婦さんには「エッ」とびっくりして心配そうにまじまじと見られてしまったことがあります。

園田
ふふふ、仕事机の上に赤ちゃんがのっているということが衝撃だったんでしょうね。

ごとう
一番上の子は2歳くらいで、次は1歳くらいで保育園に入れました。3人目を赤ちゃんのうちから保育園に入れようとしたら、うちの母親に「あんたは何が楽しくて子どもを産んだの?」と言われました。「赤ちゃんが一番かわいい時期に保育園に入れて」と思ったんでしょうね。私としては、子どもはもちろん可愛かった。でも仕事もしたかったんです。

園田
その気持ちは分かります。子どものかわいさと、仕事の楽しさとは別の種類の話ですよね。仕事と子育ては、同じ建物の中にあってもそれぞれ違うフロアで起こっている話のような気がします

ごとう
こんなこともありました。保育園に入る前に慣らし保育の期間がありますよね。あの時は預けて1時間経ったらお迎えに行かなくちゃならないので、行ったり来たりする時間がもったいないのです。だから、保育園の近くの小学校の裏の腰が掛けられるところで仕事をしたことがありました。

園田
野外で漫画を描かれたということでしょうか。

ごとう
描きました。ネームというのを。漫画のコマ割りや台詞などを決めていく下書きのような作業です。それだったらどこでもできるなあって思って。

園田
画板のようなものを使ってでしょうか。

ごとう
いえ、ノート一冊あればできるので、それと鉛筆だけを持って、1時間さえももったいなかったんです。そんな外で描いている自分っていいな、なんて思っちゃったりして。

園田
とにかく両方やりたいんですよね。

ごとう
そうです。子どもも育てたいし、仕事もやりたかった。私の仕事は家にいてできるので、子ども達にとっては、家に帰るとお母さんがいるという環境は良かったのかもしれません。

園田
仕事もしたいけれど子どもも可愛いって思う。全てが自分なんですよね。だからどちらかに絡めとられる必要なはいのではないかなと思います。家事についてはいかがでしょうか。

ごとう
私も子ども達も食べることだけは大好きなので、仕事が忙しくてもご飯だけは作っていました。小さい時は大抵おんぶしながらやっていましたよ。おんぶひもを見ると懐かしいなと思います。

園田
少し前まではおんぶして家事をするのはごく当たり前の光景だったのに、今は肩越しに向こう側がのぞける高いおんぶは珍しくなってきているんです。

ごとう
そうなんですか。首を少し後ろにかしげれば赤ちゃんの様子が分かって、赤ちゃんも前を覗きこめるのは普通だと思っていました。よく鏡でおんぶ姿をチェックしたものです。それからねんねこもよく使いました。背中から子どもの体温が伝わるぬくもりを覚えています。

園田
やはりねんねこ半纏はおんぶとセットで思い出されるものなんですね。北極しろくま堂でもねんねこ半纏をリバイバルで作っているところです。おんぶさえしてしまえば家事も仕事も何でも身軽にこなせたのではないでしょうか。

ごとう
そうですね。当時家事におんぶは欠かせなかったです。女の人が生きていく力が強いと言われるのはどんな状況下でも家事をしているからだと思うんです。

園田
歴史的には女は家事等の補助労働ばかりをやってきたように言われますが、民俗学的には養蚕など女は女でちゃんと収入になるような仕事を持っていて、実は自立している女性が多かったんだ、というようなことを最近本で読みました。

ごとう
家事もできて仕事もできるから、いざとなれば生き抜くことができるというところで、女は強いんでしょうね。

園田
子ども達ってそんな母親のことをどう見てるんでしょうね。

ごとう
子どもによって性格が違うので、それぞれなんだとは思いますが、下の娘はしっかり分析するタイプなんです。これは仕事に関してなのですが、私が漫画を描いていてなんだか最近面白く描けないなと感じていると、お母さんは勉強不足だなんて言うんです。娘も物を書くことを生業にしているんですが、自分が書くときはものすごい量の資料を読むって。どんどん自分の中に詰め込んで詰め込んで、その中から出てくる。お母さん最近やってる? なんて聞かれてしまって。

園田
お子さんが指摘してくれるんですね。

ごとう
確かに前よりも本を読んでいないなあって答えると、入れるものがなければ出る物もないんじゃない?とずばっと言われたりします。親である私のことを冷静に見ていますね。上の娘は宮古島で暮らして3年目です。今年は結婚して出産もするのですが、あの美しい空と海を毎日見ながらの暮らしを選んだことに感謝しています。息子は東京で仕事をしながらスノーボードやゴルフなどを楽しんでいるようです。みんなこちらが育てていたと思っていたら、いつの間にかすっかり育っていて、我が子はここからがもっと面白くなるのかもと思っています。

園田
大人になるにつれて、子どもは自分にとって仲間になっていくような気がします。

ごとう
ええ、仲間という感覚は分かります。やりたいけれど自分にはできなかった生き方をしてくれると、うれしくなったり。子ども達がこれからの人生をどんな風に歩んでどんな生き方を見せてくれるんだろうってわくわくします。

園田
そのようなよい親子関係になっているのは、仕事をして忙しいながらも小さい頃におんぶなどをして信頼関係を築いていたからだと思います。子どもが幼くても家事以外に仕事をする女性が増加している今だからこそ、おんぶで子育てしてほしいと願っています。


ごとう和さん プロフィール

山形県生まれ。高校卒業後、印刷会社に入るも、すぐに辞め、劇画家・旭丘光志氏のアシスタントを約5年間つとめる。1975年少女漫画雑誌「りぼん」9月号に『一平の贈り物』でデビュー。1985年フリーになる。現在はレディース漫画雑誌を中心に活躍中!3児の母で静岡市在住。

ごとう和さん 著書

「エンジェル日誌」1~39
講談社

3.11あの日を忘れない3
「陸の孤島」南相馬の子どもたち
秋田書店

母ちゃんの祈り(生きるんだ)
秋田書店

ぴんくのハート
パーキンソン病と明るく向き合う実録体験記
秋田書店


次号予告

新作ねんねこ半纏と日本のおんぶ育児

リバイバルしたねんねこ半纏の全貌と、1月26日に実施するイベントの様子を合わせてお伝えします。
日本のおんぶ文化の再発見ができること間違いなしです。


編集後記

この度北極しろくま堂定番カタログを一新して発行しました。
冊子11ページで、これまで載せられなかった商品や色柄もたくさんご覧いただけるようになっています。保存版になるようなカタログを目指して作成しました。ご出産祝いにもお役立ていただけるようになっています。
ご希望の方はお送りいたしますので、カスタマーセンター(054-653-4700)へお気軽にご連絡ください。
SHIROKUMA mail editor: MK

EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mayu Kyoi
Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano, Nobue Kawashima
Copy Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Chie Hara, Nobue Kawashima (Rewrite)

January 22, 2014