Academic Babywearing Conference technic 2017 Report

Academic Babywearing Conference TECHNIC 2017(以下ABCT)はNPO法人だっことおんぶの研究所が主催するベビーウェアリングの学びの場です。2016年は研究者や臨床の最前線の方々から赤ちゃんの発達について学ぶ講義中心の内容でしたが、2017年は実技中心!抱っこやおんぶの仕方をマニアックに学んできましたので、その様子をレポートします!

11月29日・30日は大阪、12月2日と3日は東京での開催でした。基本的な内容はそれぞれ同じです。

クラスの種類は大きく分けて3つ。

Cクラス:だっことおんぶの研究所のベビーウェアリングコンシェルジュが講師を務めるスリング、へこおび、おんぶひものクラス。どなたでも参加可。

※ベビーウェアリングコンシェルジュとは(※1)
NPO法人だっことおんぶの研究所認定の資格で、ベビースリング、昔ながらのタイプのおんぶひも、へこおび、ベビーラップ等の正しい装着方法をマスターし、その歴史や発達との関係、使用方法の指導を初心者にも分かりやすく教えることが出来るプロフェッショナル。8日間の講座を受け、受講後の試験で合格した後、認定を受ける。認定後は「NPO法人だっことおんぶの研究所認定ベビーウェアリングコンシェルジュ」として活動。認定者の中には助産師や保育士、地域で子育て支援活動に携わる方が多数。

Kクラス:Kayo Higashimuraさんが講師を務めるベビーラップ初心者〜中級者のためのクラス。どなたでも参加可

※Kayo Higashimuraさんプロフィール(※2)
東京出身。幼少期に渡米し、アメリカに長く住まい、現在は獣医として働きながら家族と一緒にカリフォルニア州サンフランシスコに居住。
子どものころから母におんぶ、抱っこされてきたため、自分の子どもが生まれる前から、抱っこ、おんぶしようと決めていた。2014年に娘が生まれてから、ストレッチラップ、MehDai(メダイ)、SSC、ウォーブンラップとベビーウェアリングを習い、娘とともに様々なところへ旅行もしている。
Babywearing International(BWI)のVolunteer Babywearing Educator(VBE)として現在活動中。2016年にはBWIの会計担当としてボランティア活動を行った。
2017年は、Center for Babywearing Studies(CBWS)でベビーウェアリングコンサルタントとしてトレーニングを受講。

Rクラス:Rachel Boarmanさんが講師を務めるベビーラップ上級者のためのクラス。ベビーウェアリングのエデュケーター限定。

※Rachel Boarmanさんプロフィール(※3)
Center for Babywearing Studies(CBWS)認定ベビーウェアリングコンサルタント。2013年にCBWSの基礎(foundation)コース、2015年に上級(progression)コースを修了している。ベビーウェアリングコンサルタントの認定に加え、2012年に自身が創設したBabywearing International of Southern Maryland(BWIのチャプターのひとつ)のMaster Babywearing Educatorとしてボランティアで活動している。2013年から2015年までEducation CoordinatorとしてBabywearing International(BWI)の事務局を務めた。レイチェルは数多くの養育者と赤ちゃんが、抱っこひもが快適に使える手助けをし、ベビーウェアリングの喜びとシンプルさを感じられるお手伝いを目的に活動している。

※1 出展:だっことおんぶの研究所ホームページ
https://babywearing.org/babywearing/#course
※2・3 出展:Academic Babywearing Conference TECHNIC 2017 ホームページ
http://babywearing.academy

北極しろくま堂スタッフはRクラスを中心に、一部Kクラスにも参加してきました。

Kayoさんのクラスで興味深かったのは、ラップのおんぶ初心者のためのクラス。「ラップのおんぶ=シートを作る」という印象があり、初心者の方にとってはシート作りが一番の難関だと思っていました。しかし、Kayoさんはあえてシートを作らずともおんぶができる方法を提案してくださいました。近々北極しろくま堂のメールマガジンでも紹介したいなと思っています。Kayoさんは幼い時に渡米され、現在はアメリカにお住まいです。今では英語の方が得意だそうで、すべて日本語のベビーウェアリングクラスをするのは今回が初めてだとおっしゃっていました。カジュアルな雰囲気と丁寧な説明が楽しくて、Kayoさんの魅力あふれるクラスでした。

Rachelさんのクラスではショートラップの活用法やフィニッシュ(ラップの最後の結び方)のバリエーション、アメリカでどのようなクラスを展開しているかについて学びました。ショートラップの活用法については以前北極しろくま堂のメールマガジンで取り上げた方法と同じものも紹介されていました。
ショートラップとはベースサイズ(FWCCで使用するサイズ)よりも2〜3サイズ短いもの。上級者向けのテクニックではありますが、床に布がつくことを好まない日本人には向いている使い方だと思います。

フィニッシュのクラスではリングを使った方法がファッショナブルかつ締めやすくて便利だなと感じました。握力の弱い方にも向いていると思います。

アメリカでのクラスの再現では、普段Rachelさんがどのようにベビーウェアリングクラス運営をしているかを紹介してくださいました。Rachelさんは”Wrapping Rachel”の名前で数多くの動画をアップしている方で、ベビーウェアリングの世界では有名人。そんなRachelさんも普段のクラスでは、高度な技術を要する難しいことをしているわけはなく、基礎を重点的に行っているそうです。そして、常におっしゃっていたのが、「抱く人、抱かれる赤ちゃんが一番快適な方法を提案してあげてください」ということ。ベビーラップは上手になればなるほど、様々なバリエーションにチャレンジしたくなるもの。でも親子のために本当に大切なのは、目新しいものを紹介することではないのだと感じました。エデュケーターがまず重視すべきは基礎づくりであること、そして自分の知っている知識や技術を押し付けることのないよう、お母さんに寄り添う姿勢が大切だと改めて心に留めました。

大阪(会場:ドーンセンター)は参加者の方がそれほど多くなかったので、アットホームな雰囲気で質問がしやすかったです。ユーザーではなく、指導する側ならでは質問が飛び交って、内容の濃いクラスでした。
対して東京(会場:東大駒場キャンパス内)は参加者の数が多く圧倒されました。ベビーウェアリングに興味がある人の人口は首都圏の方が断然多いのだと感じます。

東京会場ではランチ懇親会の後にディスカッションタイムがありました。アメリカからいらした講師2名とだっことおんぶの研究所理事長の園田さん(北極しろくま堂の代表でもあります)がアメリカでのベビーウェアリングの状況やクラスの開催方などについて自由に話し合います。アメリカでは子どもを抱っこしたりおんぶしたりすることが文化として元々根付いていないので、車に乗るときのチャイルードシートに乗せたまま家の中に運び入れて、そのまま一日過ごすという姿も珍しくないそうです。ベビーウェアリングをしていると「子どもを抱いて甘やかしてばかりいるとよくないよ」という人が未だにいるとか。そういった環境の中でお二人が抱っこクラスをすることで、ひとりまたひとりとベビーウェアリングする人が増えていく様子を見るのは大きなよろこびだとおっしゃっていました。
様々なお話の中で特に興味深かったのは、ベビーウェアリング・ライブラリーのこと。アメリカのベビーウェアリンググループが様々なベビーキャリア(抱っこひも)を保有していて、希望するご家庭に一定期間(1ヶ月)貸し出しをするサービスがあるそうです。年会費30ドルを払えば基本的には誰でも利用できるそうで、この金額でこれほどのサービスが利用できるのは抱っこひも選びに困っているパパママや、抱っこひもを買う金銭的な余裕のない家族にとって大きな助けになるだろうと思います。そしてベビーキャリアの管理(洗濯や発送、メンテナンスなど)はすべてグループの人がボランティアでやっているというのには驚きました。アメリカの文化の中ではボランティアで何かをするのは自然なことなのかもしれませんが、日本で同様のことをするにはまだハードルが高そうです。(大量のベビーキャリアを保管しておく場所探しにも苦労しそうですね。)

今回のカンファレンスに参加して感じたのは、ベビーウェアリングはもっと自由で楽しいものであるということ。特にベビーラップはルールが多い、覚えなければいけないことが多いというイメージが強く、気軽にチャレンジしにくいように感じていました。しかし、安全がきちんと確保できていることを大前提として、細かいルールに縛られすぎず、抱く人と抱かれる子どもが快適か、楽しいか、幸せかを大切にしたいと感じたカンファレンスでした。

ここで学んだことを今後の北極しろくま堂のこれからに生かしてまいります!

次号予告

北極しろくま堂メールマガジン200号記念対談 「アートな子育て 〜腕と胸で育児の意識を変える〜(仮)」おかげさまで北極しろくま堂メールマガジンも次号で200号を迎えます。その記念として、有限会社モーハウス代表 光畑由佳さんと北極しろくま堂店主・園田の対談企画をお送りします。2000年前後に出産・育児を経験し、それをきっかけに事業を始めたふたりが、この20年を振り返りつつ、育児のこと、仕事のこと、これからのことを語り合います。

編集後記

1月ももう10日になってしまいましたが、みなさまあけましておめでとうございます。
今月の特集ではABCTの様子をレポートしました。スリングやへこおびからベビーウェリングを始めた私にとって、正直ベビーラップは手間のかかるもの、というイメージがありました。抱っこするのにこんなに時間がかかってしまうのは実用的でないのでは?とも思っていました。でも、やってみると楽しいんです!ベビーラップをやってみようかなというお母さんたちに「難しいそう/大変そう」というネガティブなイメージではなく、「やってみたい!/楽しそう!」と思っていただける工夫をこれから北極しろくま堂として、やっていきたいなと感じました。世界に数あるベビーラップメーカーの中で、北極しろくま堂だからできることを探っていきたいです。
さて最後になりましたが、2018年も抱っことおんぶに一生懸命取り組んでまいります。本年も北極しろくま堂をどうぞよろしくお願いいたします。
SHIROKUMA mail editor: MK②

EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mai Katsumi
Writer Mai Katsumi, Masahiko Hirano
Copy Writer Mai Katsumi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Nobue Kawashima